レポート:根尾川むいむいの森 「木と遊ぼう」

根尾川むいむいの森 プレーパーク「木と遊ぼう」                 2023.11.16
講師:三戸久美子さん(樹木医)
参加者と森を歩きながら、木の形や状態を観察し、木に何が起きていてどんな手当てができそうか…。木の活用ができそうか…。
三戸さんと共に解読したり説明を受けたりして、樹木に対する知識やワザを学び深めた。

木の生き方暮らし方 

どのように生活し、どのように成長や傷の修復をしていくか…。葉で光合成をして生活費(栄養)を稼ぐ。稼ぐための体制。稼いだものの貯め方。(成長のしかた)自然の木:合理的で美しい。虫や鳥、動物たちの命の源でもある。

森:樹木はもともと、折れるし倒れる生き物である。周りの木と協力し合うことも、逆に競争もする。
木:根の周りを締め固められるのを嫌う。 傷口から菌類が入って材が腐ったり、根や土に原因があって体調不良になったりし、枯れ枝が生じてしまう。
木の皮:体を守っている。(傷や乾燥などから)

樹木との付き合い方

・森で活動することは、楽しく安全ばかりでなく、危険もセットである。その中で過ごさせていただくという気持ちを大切にしたい。
・相手がどんな生き物か…。知って、対処することで、お互いにいい関係が築ける。森から得たら、森にお返しをする。相手は何を欲しているのか…。読み解いて対処する術を学ぶ。
・木が嫌がることや、傷をつけたり痛いことをしたりしない。 ⇒後で返ってくる。
・木を腐らせたり危険な状態にしたりしないように維持管理をする。
・木の声を聴く(ボディーランゲージを読み解く)
・どんな用途で木を使うのか。生態や特徴をふまえて木を選ぶ。

樹木のボディーランゲージ

~樹木が語っているメッセージを観察し解読する~

・木の形には意味がある。
・気になる箇所や、木一点だけを集中してみるのではなく、全体から見たり、色んな角度や距離から見たりする。

むいむいの森 気になる樹木のボディーランゲージ

写真 木の状態・徴候 対処法
(エノキ) 幹につるが巻き付いている。 つるで木(葉)が覆われると、光を取り込むことができない。 つるの成長と共に、幹が締め付けられて弱ってしまう。 つる切りする。下の方の浮いている部分を切除するとよい。
(サクラ) テング素病:感染病 枝が異常に密生する奇形症状 木が短命になってしまう。 症状のある枝のコブより下から切除。 潜伏芽もあることを留意する。
(カエデ) 異物を巻き込んでいる。 叉:成長が早い 巻き込んで、飲み込む ⇒不健全。弱点になる。 木のそばに、人工物などの異物となるものを置かない。
表層に根が出ている。 土が薄い。固い。 根元に落ち葉をかけてクッションを作る。 場合によっては、土中環境の改善必要。 木の下を通る時に気を配る。 通路を考える。
地衣類の付着 地衣類が付くから木が枯れるわけではない。(低木は別) 抗菌物質として、有害菌などから保護してくれる。 木の成長度合いや木の状態を見る目安にもなる。 ツツジやサツキなどの細い枝に付着すると、成長抑制されたり、枯れてしまったりする。この場合、歯ブラシなどで除去したり、枝を切除したりして木を保護する。 なぜ地衣類が付くのか。木はどうして欲しいのか。考える必要あり。
空洞・腐朽 樹木の弱体化や折れや倒伏につながる。 原因は様々。虫や動物などが空けた穴。腐朽菌、傷、風など外的要因からの影響… 木の成長に問題ない場合もある。 木が負担を受けないように、切断する場合は、ラインを考えて切除する。

詳細な検査方法

先の尖った鋼棒を突き刺す
空洞や腐った部分に突き刺して、どの程度腐っているかを確かめる。
土の深さや固さを確認するのにも使える。

木槌で叩く
音の違いを比較して意味を考える。
樹皮の剥離、形成層が死んでいる、空洞、腐りかけ…

剪定や管理する上で留意すること

・木も人生がある。相手(木)と相談して、そっとしておいた方がいい場合、伐った方がいい場合がある。その上で、もらえるものはありがたくもらう。

・木の健康にも関係してくるため、木のどこを伐るのか見極める。
枝の剪定をする場合:幹と枝の境目の【くびれ】で切る。木の成長と共に、いずれ切り口を巻き込んで、傷口を修復する。
×フラッシュカットをしない。幹とのギリギリで切ると幹を傷つけてしまう。

・剪定時期:〇 休眠期…秋~3月前の、芽や根が動き始める前まで。
×春~夏は、必要以上に触らない。

むいむいの森に生息する樹木

樹種
生態
カラスザンショウ 実:みかんの香り
葉:もむと、強くきつい香りがある トゲは不規則で多数生える。幹には、トゲの土台がこぶ状に残る。
エノキ つる切りを施す。 実:おいしい。救荒植物(スダジイ、マテバシイなど)である。
カエデ 立派な木。材としても適している。コルクは薄い。薄い影がいい。
ハナミズキ  
コナラ(実生) 落葉広葉樹 ミズナラと似ているが、葉柄で見分ける。コナラは明確な葉柄がある。冬は明るく暖かい。生態豊か。実生の木は観察の材料になる。
カシ 常緑広葉樹 カシが群生している場所は暗くて冬寒い。
フジ つる植物。木に巻き付くことがあるので注意。つるの巻き方:ヤマフジのつるは右上。ノダフジのつるは左上。
スギ 表スギと裏スギがある。表スギ:太平洋側 触るとチクチクして痛い。浦スギ:日本海側 多雪地
ヒノキ スギ、サワラとの違い
スギと比べると、樹皮が幅広く裂け、はがれやすい。葉がうろこ状(鱗状葉)
サワラとの葉の違い 葉裏の気孔(サワラ:X字形、蝶形)(ヒノキ:Y字形)
ヒイラギ 葉のふちにトゲがある。白い花が咲き香りがある。黒紫色の実を付ける。 クリスマスシーズンに見る、赤い実をつけるヒイラギはセイヨウヒイラギ。
シナヒイラギ ヒイラギに似ているが、科が違う。モチノキ科。四角い葉が特徴。
ムクノキ(アサ科) 葉っぱを触ると表面がざらつき、乾いた葉はやすりとして使える。果実は干し柿の様な味で食べられる。ケヤキ(ニレ科)と、扇形の樹形や葉がよく似ている。ケヤキの実食べれない

木の観察(診断) チェック項目

項目 観察する視点・徴候
木の立つ位置 ・人や車が近づく場所か?  隣接地への影響は?
・木のそばに遊具やデッキなど、長時間人が留まる場所であれば木の状態は重要
・樹木の安全性:木の立っている位置の利用状況を知る必要性 ⇒ 木の状態観察
幹折れ ・腐朽、穴(キツツキや虫など)、亀裂、傷、外科手術痕、樹皮(変形、横筋、樹液)  材の脆さ、成長した胴ぶき枝…
・材の一部が腐ったり、弱ったりしているときに、強風や大雨、冠雪をきっかけとして折れる。
・キリやポプラなど、成長が速くて年輪幅が広い樹種や、香り成分や抗菌物質が少ない樹種は、腐りやすい傾向にある。
大枝折れ ・大枝の枯死、腐朽、穴、亀裂、傷、外科手術痕、活力、枝の湾曲、叉の形…
・強風や雨、冠雪をきっかけとして太い枝が折れる。
・叉の角度や形で結合状態(強度)が異なる。
・クスノキやクヌギ、エノキ、スギ… 自ら枝を落下させる樹種もある。木の下注意!
中小枝の落下 ・枝の枯死、腐朽、亀裂、傷、枝の湾曲、ふくらみ…
・下の方にあって日陰になりやすい枝は、木が積極的に枯らし、ある時落ちてくる。
・折れた枝が、下の枝に引っかかって止まっている「かかり枝」は、風などで落ちてくることがある。早めに見つけて取り除いておく必要がある。
根返り倒木 ・木に関する事故で、最も被害の大きくなる可能性がある。木が根ごと倒れる。
・太い根や材に傷がないか?腐ってないか? 根張り部の発達や活力は?
・キノコ、土壌の締固め、土壌の安定性、近くでの工事、地形、地質…