今から70年以上も前に、辺境の寒村に暮らす子どもたちが、
「山びこ学校」という、一冊の文集を作った。
彼らは、小学校の社会科の授業を通じて、
自分たちの目の前にある現実の生活を直視し、
自らの関心ごとに基づき、
「綴方」という手法で文章で表現し、
それをもとに友人たちと討議し、考え、行動した。
文章の形式は、詩や、日記や、論考、分析など、様々だ。
1ページ以下に収まる短い作品も、
10ページ以上にわたる作品もある。
定量データの分析レポートもあれば、
文学的な作品もある。
どれか1つは、あなたの心を打つはずだ。
2022年を生きるぼくたちにとって、
こうした実践が過去にあったこと、
こうした本が残されていることは、
いったい、どのような意味を持つのか。
一緒に、考えてみませんか。
当時の社会科の教員が書いた、本書のまえがき、あとがきを抜粋します。
(まえがきより抜粋)この本は、昭和二十年代の日本の子どもたちが、「いかに生きるべきか」と呼びかけている必死のことばであります。私など、もとよりこれにこたえる答はもっておりません。 五年たちましたが、これにこたえ得た人はないように思われ、何かすまない気持で落ちつきません。 現代日本では、こたえ得る人がないようにも思われるのであります。 子どもたちにたいし、もうしわけないしだいです。 しかしそれだけに、みんなで読み、みんなで考えたいものであります。
(あとがきより抜粋)明治維新のとき自らを後進国と自認した日本は、軍隊が強くなれば世界は認めるだろうということで、天皇を絶対なる神であると措定し軍国主義で日本人の心をコントロールしてきまし た。それが崩れた一瞬のすきにできたのが『山びこ学校』です。しかし、池田首相の所得倍増論をきっかけに、こんどは、お金もちになれば世界中が認めるだろうということで経済主義教育につっぱしり、いじめ、登校拒否、オウム教などの今日的状況を作りあげているわけです。 そこで私は、日本人が人間として、地球市民として生きようとするとき、その原点を探る資料の一つにしていただきたく、岩波文庫にいれる決心をしました。
日時:2022年11月26日(土)10:00〜12:00(2時間)
方法:オンライン(ZOOM)
定員:10人(先着順)
キュレーター:小池達也
参加費:500円
申込:https://yodaka-book2.peatix.com
書籍:山びこ学校(岩波書店)
ほんものの教育をしたいという願いから,社会科を手がかりに生活綴方の指導をおこなった山形県山元村中学校の教師,無着成恭(一九二七―)が,その成果をまとめた詩・作文集(一九五一年刊).いまなお読む者の心を強く打たずにはおかない克明でひたむきな生活記録.戦後の教育に大きな影響を与えた. (解説 国分一太郎・鶴見和子)
<2022/11/26追記>
当日の書籍紹介、開催写真を追加しました。
話したこと(一部);
・時代背景(特に、戦後の社会学や教育、経済状況、アートコミュニティについて)
・自分の具体的な困りごとや経験に立脚して、表現したり学ぶことについて
・心理的安全性とプライバシーへの配慮について
・現代における子どもの育ちと学びについて